認知症疾患医療センター
平成24年4月より、東京都認知症疾患医療センターを浴風会病院に設置し、事業を開始しています。センターでは、認知症に関する鑑別診断を実施するとともに、地域の保健医療・介護関係者等との連携の推進、人材の育成等を行うことにより、地域における認知症疾患の保健医療水準の向上を図ることを目的としています。
センター長ごあいさつ
超高齢社会の日本において認知症が大きな社会問題となっています。 認知症の原因にはアルツハイマー病など様々なものがありますが、その多くは治癒が難しい病気です。 また病気の進行に伴って日常生活の自立が困難となり、介助が必要となりますが、早期に認知症に気づき、治療・対応をすることで、治癒は困難であっても進行を遅らせることが可能となっています。
認知症疾患医療センターでは認知症に関する様々な相談を行い、診断・治療、認知症治療薬の臨床試験を行っています。 また、認知症を支える人材育成のお手伝いもしています。 認知症になっても安心できる生活のため、皆様のお役に立ちたいと考えております。 お気軽にご利用ください。 |
精神科 古田 伸夫 |
認知症について
認知症とは
Ⅰ 記憶障害があり、Ⅱ 記憶以外の知的機能の低下があり、Ⅲ 社会生活上の障害をきたした状態です。
具体的には以下のような症状がみられます。
Ⅰ 記憶障害
▶ 単なるもの忘れとは違う
▶ 昔の記憶は残っている
≫ 記憶システムが正常だったとき=過去の出来事は記憶として残っている
≫ 昨日のこと”より“昔のこと”の方が思い出しやすい
Ⅱ 記憶以外の知的機能の低下
▶ 失語
≫ 喚語困難:物や人の名前が出てこない、あれ・それが増える
≫ 語義失語:言葉の意味がわからない、“鉛筆ってなぁに?
▶ 失行
≫ 身体機能は正常だが、行動・行為ができない。
≫ 使えていたものが使えなくなる、服の着方がわからない
▶ 失認
≫ 感覚機能は正常だが、脳が認識できない
≫ 目の前にあるものを探すなど
▶ 遂行機能の障害
≫ 物事を計画し、準備し、段取りをとることができない
≫ 料理、旅行の支度など
▶ 見当識障害
≫ 時間や場所がわからない
Ⅲ 社会生活上の障害
▶ できていたことができなくなる
≫ 料理ができない、買い物が用をなさない
≫ 身のまわりのことができない:着替え、入浴、排泄・・・
▶ 失敗・恥の体験
≫ 本人の自覚:自信喪失、不安、混乱、困惑
≫ 自発性の低下;“やりたくない”⇒活動性の低下、生活の狭小化
認知症の症状
認知症の症状としてすべての認知症にみられるⅠ 中核症状と、
すべての方にはみられませんが本人の苦痛や介護負担の要因となるⅡ 周辺症状があり、それぞれ時間経過とともに進行・変化していきます。
Ⅰ 中核症状
▶ 記憶、その他の知的機能の障害
▶ 社会生活上の障害、日常生活自立度の低下
Ⅱ 周辺症状=BPSD
▶ 認知症の随伴症状、周囲の関わりに対する“反応”
▶ 精神症状:幻覚、妄想、抑うつ、不安、不眠など
▶ 行動障害:攻撃性、不穏、無目的な行動、徘徊、無為など
Ⅲ 認知症の進行
▶ 生活が自立できなくなる = 他者の介護が必要となる
▶ 周辺症状への対応:ケア・対応の工夫、薬物療法
認知症の原因
認知症の原因には様々な病気・状態があります。なかには適切な治療により状態の改善が見込めるタイプもあります。代表的な原因を示します。
変性疾患:大脳が進行性に萎縮
▶ アルツハイマー病:原因として最多
≫ 記憶障害に始まる進行性の経過
▶ レビー小体型認知症
≫ パーキンソン症状、幻覚が特徴
脳血管障害:脳梗塞・脳出血が原因、血管性認知症
▶ 脳血管障害の再発予防が重要
脳外科疾患:治療可能な認知症
▶ 慢性硬膜下血腫
≫ 頭部打撲後1~4週間のうちに血腫が出現、大脳を圧迫し症状が出現
▶ 正常圧水頭症
≫ 脳脊髄液の循環不全
≫ 三主徴:認知症症状、歩行障害、尿失禁
身体疾患:治療可能な認知症
▶ 糖尿病、慢性呼吸器疾患、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏、アルコール・薬剤の影響
うつ病:仮性認知症、治療可能な認知症
▶ うつ病の症状:思考機能の低下、“何も考えられない”
認知症の診断
認知症を早期に正しく診断することは非常に重要です。以下に診断方法を示します。
病歴の確認
▶ 認知症に“気づく”ことが重要
認知機能検査
▶ スクリーニング検査:MMSE、長谷川式
画像検査
▶ 形態画像:CT・MRI
≫ 脳の“形”を調べる。萎縮や血管障害の部位・程度
≫ 脳外科疾患の検索
機能画像:SPECT・PET
▶ 脳の“機能”を調べる。血流・代謝
▶ 早期診断に有用
一般検査
▶ 身体状況の確認、身体因による認知症の検索
認知症の治療
現在の医学では多くの認知症は残念ながら治癒させることは困難です。しかし、適切な対応や治療を行うことにより進行を緩やかにすることができます。
また、当院では認知症治療に関する臨床試験も行っています。
非薬物療法
▶ 体調管理
≫ 高血圧、糖尿病などの生活習慣病の管理
≫ 食事や水分の管理、適切な運動習慣
▶ 日常での刺激維持
≫ 外出、他人との接触、適切な運動、頭をつかう
▶ リハビリテーション
≫ 回想法、音楽療法、芸術療法、学習療法、“脳トレ“
薬物療法
▶ 抗認知症薬
≫ H23から新たに3剤、計4剤の使用が可能
≫ アルツハイマー病の進行を“一定期間”、”抑制”
▶ 脳循環改善薬
≫ 脳梗塞の予防
BPSDの治療
▶ 症状のみられる状況を分析し、ケアや対応の工夫が重要
▶ 適切な薬物治療も有効性が期待できる
受診について
もの忘れ外来、認知症相談につきましては 認知症疾患医療センターの受診について をご覧ください。
東京都認知症疾患医療センターだより
東京都認知症疾患医療センターニュース
東京都認知症疾患医療センターでは、YouTubeの制作をしております。
ぜひ、ご覧ください。
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